「顔彫り手本の途中の工程から仕上げまで」の番外編です。顔彫り、特に鼻と口のあたりや首元などの彫刻に適した小刀について父が解説しています。
この投稿の初めに掲載した写真は、動画で紹介している小刀です。動画に登場する順番に上から並べてみました。
一番上は、木彫用の平ノミや切り出しと呼ばれる小刀を父が改造したものです。
二本目の小刀は4:04頃に言及しているお玉で、全体が丸くなっています(「その2」でも登場しました)。
動画での父の解説に補足するため、下の画像ではこの2本の刃先と横顔の図を合わせてみました。
父が改造した小刀は、左端が角ばっていて下の方が丸みを帯びています。鼻の付け根と鼻の下から唇にかけての部分を彫るのに適した形になっています。1の矢印のところが角ばって彫れて、下にいくに従って丸くなっているので、唇のめくれの部分もうまく彫れるのです。
鼻の付け根は、普通は二本目のようなお玉で彫りたくなりますが、鼻と鼻の下の境目(2の矢印のところ)が丸みを帯びてはっきりしない、というわけです。
なお、木彫用の刃は大半が、真ん中に鋼(はがね)があって両側が軟鉄(なんてつ)の合わせ刃で作ってあり、日本刀と同じ造りなのだとか(裏刃を見ると分かりやすいかも知れません)。
改造する際の注意点は、真ん中の鋼の部分を使うようにして、(つい、端の角を利用したくなりますが)両端は使わないこと、だそうです。通常、左刃は鋼だけを用いて作っていることからも分かるように、刃先が鋼であることがポイントのようです。
上から三本目の小刀は、4:46頃に登場する両刀の小刀です。
普通は一本の小刀には刃が一つだけついていますが、父は両方につけることを思いつきました。
例えば鼻の下を上向きの小刀で彫っているうちに、今度は刃が下向きの小刀を使った方が良さそうだと思った時など、一本に両方の刃がついていれば、いちいち別の小刀を探したり持ち替えたりせずに済むというわけです。なので、二つの刃は同じくらいの大きさで向きや形などが異なるものになっています。
動画の中で父が刃先の形を図に描きましたが、刃先の実物(上の小刀の刃先)がこちらです。いわゆる鶴首(つるくび)の系統の小刀で、いずれもサイズが小さく、刃の向きが逆になっています。
上から四本目の小刀は印刀を改造したもので、7:56頃に登場します。刃先はこちら。
上から五本目と六本目は、14:20頃に紹介している地さらい(地面をさらう、取り除く、という意味からきた名称かと思います)で、その刃先はこんな感じです。
一番下の小刀は17:57頃に取り上げている両刀のもの。
下の画像はその刃先です(似ているけれど微妙に違っています)。
駒田牧子