【動画】顔彫り手本の途中の工程から仕上げまで(その9)髪に墨を塗るなどして仕上げる

このシリーズの最終回です。アイボリーブラックを塗った上から青墨(せいぼく)という墨を少し薄めに擦って塗ります。黒かった髪の毛がグレーか茶色がかった穏やかな色合いになります。

一通り塗って乾いたら、狸などの動物の毛でできたブラシで、ブラシがけ(といっても、髪を梳かすわけではないですが)をして艶を出します(15:19頃から)。

そして小刀で生え際を整えます(17:05頃から)。色を少し削りとって、いかに美的に生え際らしく見えるようにするかが腕の見せどころだそうです。ちなみに、父は浮世絵に描かれている女性の生え際を参考にしています。

ちなみに、父は置物彫刻で修業をしましたが、置物の頭髪は伝統的に墨が用いられていました。根付は手で触れるため墨だと取れやすく、父はボンドのりで溶いた顔料(筆で塗りやすいように水で薄くする)を塗ることで取れにくくし、さらに墨を塗ることで好ましい色に辿り着きました。

また、父は稲田一郎さんの作品に憧れて着色を始めたので、艶消し(光沢のないマットな仕上げ)を目指しています。

再度ブラシがけをします(27:06頃)。頭髪の毛道を片切彫りにしていたことで、ブラシがけにより艶が増すのだそうです。毛道の片切彫りについては、「その2」で解説しています。

やっと頭髪が終わり、お団子のてっぺんにある簪(かんざし)を白く塗ります(31:36頃から)。純チタンとコニシの木工用ボンドのりを用います。そして、すでに彫ってあった銘に同じ色を差します。

これで完成です。といっても、最後の最後まで穴(黒い絵の具の空洞)を塗りつぶすのに手間がかかり、マンモス牙の大変さがよくわかります。

ちなみに、作業がひと段落するたびに父が作品を遠くに置くことに気づいた方もいると思います。例えば油絵の画家が色を塗っては少し後ろに下がって絵の全体を眺めるのと同じことです。

作品を一旦遠くに置いて眺めることで、間近で見ていては気づかないこと、例えばいま行った作業が全体として見た時に上手くいったか、あるいは作品全体のバランスはどうかといったことを確かめたりできるのです。

このシリーズを最後までご覧いただき、ありがとうございました!


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