おすすめの漆用語集(日本語と英語)、しかも無料です!

「日本の漆芸で使われている言葉を調べるのに良い資料を探している」という方におすすめの用語集があります!

私自身、翻訳の仕事で漆の専門用語には苦労してきました。先日ご紹介した『うるしの話』(詳しくはこちら)は、読み物として楽しみながら漆芸の世界を概観できる良さがありますが、分からない言葉やもっと詳しく知りたいことが出てきた時は、辞書的なものが役立ちますよね。

漆芸全般を網羅している辞典としては、私も愛用しているこちらがおすすめです。
漆工史学会編『漆工辞典』角川学芸出版、2012年

ただ残念なことに、もはや入手困難。2023年3月現在、日本各地の古書店での在庫を一括検索できるサイト「日本の古本屋」でも見つからず、アマゾンの古書に至っては、なんと8万円…。

でも、朗報があります!

漆芸の技法・材料・道具など基本的な用語が、コンパクトにまとまっている用語集があるのです。しかも無料でPDF版の閲覧とダウンロードができます!

目白漆芸文化財研究所編『日本の漆工技法・材料の基本用語』目白漆芸文化財研究所、2020年
閲覧とダウンロードは下記の目白漆學舎ホームページからどうぞ。
http://urushigakusha.jp

ちなみに出版元の目白漆芸文化財研究所は、蒔絵の人間国宝・室瀬和美先生が主宰されています。先生はこの用語集を執筆なさいましたが、上述の『漆工辞典』の編集や執筆も担当されました。

そして、この用語集は英語の対訳付きです!

英訳はまずジュリア・ハットさんと私こと駒田牧子が行い、英国ヴィクトリア&アルバート博物館 東洋部門 元上級学芸員のルパート・フォークナー氏が編集してくださいました。ルパートさんは室瀬先生が舌を巻くほど漆芸の技法を深く理解されていて、翻訳の精度と文章の質を大いに高めてくださいました。ジュリアさんも歴史的・文化的背景の知識を反映させてくださいました。

『うるしの話』英文版(詳しくはこちら)と同様に、室瀬先生と根津美術館学芸員の永田智世さんを質問攻めにして、翻訳者一同で数ヶ月にわたる侃侃諤諤の議論を経て完成した英訳です。

私はさておき世界最高峰の専門家の方々が携わった二カ国語の漆用語集として、これ以上のものはそうそう望めないと思います。

この用語集は、私も翻訳の仕事で重宝しています。ジュリアさんもご自身のお仕事で活用されているようです。

この漆用語集は、英訳をもとにスペインの熱心な漆作家さんたちによってスペイン語版も作成されました。

目白漆芸文化財研究所とスポンサーの東芝国際交流財団のおかげで無料でご利用いただけるこの機会に、『うるしの話』(詳しくはこちら)と併せて是非ご活用ください!

それにしても、室瀬先生は私の質問に対してすぐに理路整然と分かりやすくお答えくださり、驚くばかりです。作品作りというのは、手の感触や色合い、質感など、感覚で判断することが多いので、言葉で説明しづらいこともあるはずです。

先生は常に頭の中で言語化することを心がけておられるのだろうと思います。人間国宝は、高い技術を有しているだけでなく、技術の継承もその使命なので、技法のことも業界全般のことも客観的に説明できるからこそ務まるお仕事なのでしょうね。

ご参考までに、先生が蒔絵について語っている動画が下記のリンクからご覧いただけます。
https://maki-e.exhibit.jp/special.html

駒田牧子

最後までお読みくださり、ありがとうございました!

表紙 目白漆芸文化財研究所 (c) 2020


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