根付をもっと知りたい人にお薦めの本

「根付ってあの小さいやつでしょ?見たことあるけど、詳しいことは知らない」「根付って奥が深そうで、とっつきにくい」「いろんなのがありすぎて、なんだかよくわからない」。そういう方は結構いらっしゃると思います。

根付をもっと知りたいけど、どこから手をつけていいのかわからないし、どんな本を読んだらいいのかわからない。

そんな方に、私こと駒田牧子の著書『根付 NETSUKE』(角川ソフィア文庫)をお薦めします!手前味噌で、しかも数年前に出版した本ですみません。でも、お薦めするには理由があります。私自身、今でこそ根付の面白さを書籍やトークなどで多くの方にお伝えしていますが、昔は根付のことはよくわからなかったのです。

そんな私が数十年かけて国内外あちこちに出かけ、多くの方々や無数の作品や書籍から学んで培った知見のエッセンス(一番美味しいところ)が、なんと文庫本1冊で得られるのです!自分で言うのもなんですが、大変お買い得です(笑)。

そもそも根付作家の家に生まれたとはいえ、子供の頃は「お父さんや仲間の人が彫っている、なんか小さいもの」程度の理解で、古根付にいたっては知識はほぼ皆無でした。

根付を詳しく知るようになったのは、20歳の頃(1991年)から両親に連れられて海外で一年おきに行われる国際根付ソサエティのコンベンション(世界大会)に参加するようになってからです。

そして、根付の面白さに目覚めた私は、20代後半に根付の専門家(というか、根付の楽しさを伝える人)になりたいと思いました。米国の有名美術館の学芸員さんに相談したところ、「根付を教えてくれる学校はないですからねぇ」と言われ、独学を決意します。

両親と根付の大会に何度も参加しただけでなく、ロバート&ミリアム・キンゼイさんやジョー・カースティンさんといった著名なコレクターさんのお宅を訪問するなど、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、オランダ、フィンランド、ウクライナ(そう、ウクライナには根付のコレクターさんや作家さんが何人もいるのです)といった国々に計20回以上訪れました。

海外には日本から流出した古い根付が大量にあって、現代作品も1990年代までは盛んに輸出されています。名作に「これすごい!」、珍品に「こんなものまで?!」と驚きながら、江戸時代から現代までの、膨大な数の多種多様な根付とその関連品を鑑賞しました。

国内でも、学校代わりに国際根付ソサエティ日本支部と日本根付研究会に入会し、例会や会報で根付の題材の豊富さ、有名な根付師の作風、地域ごとの違いなどを学びました。こういうのって、知れば知るほど楽しくなり、興味が湧いてくるんですよね。

そして、根付作家として半世紀以上のキャリアがあり、国際根付彫刻会会長を十年ほど務めた父・駒田柳之からも日常的にいろいろな話を聞きました。

国内外で延べ数百名のコレクターさんや商人さんや作家さんの考えを聞くたびに発見の連続でした。「そういうところが見どころなんだ!」「そういう楽しみ方があるんだ!」「根付って、こんなに面白くて、奥が深いんだ!」と。

そのうち「本にはあまり書かれていないけど、他の人もこれを知ればもっと根付を楽しめるのにな〜」と思うエピソードがいっぱい溜まってきました。自分だけに留めておくのはもったいないと思っていたところに、入門書を書くお話をいただいたのです。

というわけで、私が「根付って、こういう良さがあるんですよ!」「これを知っていると、もっと楽しめますよ!」と思う事柄をぎゅっと詰め込んだのが拙著『根付 NETSUKE』です。

内容としては、根付の用途や種類、江戸時代から現代に至る歴史(発展した経緯)、印籠やたばこ入れといった提物との関係を紹介しつつ、「慣れ(なれ)」「古色(こしょく)」「触れる」「裏も見る」など、根付独特の美点や鑑賞ポイントを解説しています。

さらに、これまでの出版物にあまり書かれていないような、根付の取り扱い方や作品を入れる箱などについても触れました。

また、父から教わった材料や制作のことに加え、例えば「感情移入と擬人化」「根付は進行する美術」「根付心」「絶対的な傑作が出にくい」など、父の考えもふんだんに盛り込みました。

拙著を読むと、根付とは何かを理解するのに役立ちます。また、根付の実物や写真を見る時に、見方、いわば目の付け所が違ってくると思います。単に外見だけでない、根付の本当の面白さが見えてくるのではないでしょうか。

根付の写真は、古典と現代の作者、題材、時代のバランスに配慮しつつ、私と両親と拙著の監修者である日本根付研究会元会長・渡邊正憲さんの内外の人脈を駆使して、100点以上の良質の作品を収録しました。過去にあまり発表されていない作品も取り上げていますので、「こんなのもあるんだ〜」と思っていただけるのではないでしょうか。

作家別、地域別に作品を多くご覧になりたい方は、他の本や図録をお薦めします(が、他の本でも展覧会でも、拙著をお読みいただくと、より深く楽しめると思います)。

あとがきに、こう書きました。「根付をよくご存知なかった方にとっては本書をご覧頂いただけでも大きな一歩だが、他の根付の本を読んだり根付の実物を美術館やギャラリーで見たりするなどして、さらに一歩踏み出すと世界が開ける。そのようにして人生がより豊かになった方がたくさんいる。これも何かのご縁だと思って、ぜひ根付の現物や出版物に接してみて頂きたい。」

ぜひ拙著を読んで、わかりやすいのに奥深い根付の世界を覗いてみてください。人生の楽しみが増えるかも知れませんよ。

出版まもない頃、ありがたいことに日本根付研究会会報の編集後記に荒牧すが子編集長(当時)が次のような素敵なご感想をお書きくださいました。

 少し気が早いですが、七月になると、夏休み子ども科学電話相談というラジオ番組があります。大人のファンも多いと聞きます。私もその一人です。難しいことを子どもにも解るように説明するのは大変だな、と回答者たちの奮闘振りを面白く聴いています。そして、難しいことを平易な言葉に言い変えるには真の理解が必要、ということを改めて感じています。
 駒田牧子著、渡邊正憲監修の「根付 NETSUKE」を読みました。たくさんの写真を楽しみながらスラスラと読むことができました。そして、これは正に子ども科学電話相談だと思いました。著者の駒田さんが、根付作家の娘という内からの視点と翻訳家という外からの視点とを持ち合わせているからでしょう。
 それに、この写真。根付のことを知っている人なら、また、出版について多少知っている人なら、個人で、これだけ広くあまねく且つ良質な作品の写真を集めて掲載するのが、如何に容易でないかが分ると思います。駒田さんがこれまで大切に培って来た、国内外のコレクターや美術館、博物館との人脈の賜物でしょう。
 根付の本というと重い図録が多く、一般の目に触れにくいようです。しかし、これは、分り易い解説と、作家、題材、時代をバランス良く選んだ豊富な写真とで、文庫本。絶対お買い得!日本での根付の認知度が上がることでしょう。
荒牧すが子
平成二十七年(二〇一五)四月吉日

日本根付研究会『根付の雫』73号、p. 56、2015年

知り合いでコピーライターの秋山俊則さんからも、素晴らしいご感想をいただきました。

これまで根付を紹介した書籍というと、専門性が強くて高尚な雰囲気を持ち、一般の人々が手に取りにくいイメージでした。しかしながら、この本はたいへん親しみやすく、「根付って何?」という問いに対する明快な答えとなる一冊ですね。

しかも入門書とはいえ、すでに根付に親しんだ人たちにとっても、実に興味深い内容だと思います。あとがきに書かれているように、文庫というサイズも根付のスケールにふさわしく、まさに作品を手にしているように写真を楽しむことができます。

それにしても、これだけの優れた根付の写真を掲載できたとは、牧子さんの人脈あってのことで敬服いたしました。掲載されている写真や画像は懐かしいものも多く、私にとっては思い出深い一冊となることでしょう。この本をきっかけに、根付の認知度がさらに高まっていくといいですね。

「ジャパノロジー・コレクション」というこの本のシリーズ。ほかにも面白そうなタイトルが揃い、全巻欲しくなりました。とりあえずは先日「香柳園」で紹介された『妖怪 YOKAI』を購入しましたよ。こちらは、根付作家さんたちにとっても興味深い内容ではないでしょうか。

ほかにも次のようなご感想を含め、多くの方から嬉しいお言葉を頂戴しました。

今回、改めて写真に付いている説明もよく読んだ。
根付の世界は、奥が深くて取っ付きにくいもの、全然違う世界のことと思っていたが、そうではないことがわかった。久しぶりに面白い世界を覗いた。

本は、文に言葉の無駄が無く、初心者でも興味が湧くような構成の良さを感じる。ページをめくるのが楽しみで時間の経つのを忘れる。

また、柳之先生の制作過程の写真が面白かった。材料の切り出しから始まっていて興味深かった。
材料も虎の牙など色々あるのに驚いた。
広く皆さんに渡るといい本だと思った。
好きな作品は「あらよっ」(カバが逆立ちしているもの)。

以上、長い投稿文でしたが、お読みくださりありがとうございました!

駒田牧子

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