日本の金工についての素晴らしい英訳書を紹介します

日本の金工について書かれた英語の本を読みたい方や外国人へお薦めの本を探している方へ。前回紹介した大角幸枝著『黄金有情 − 金工のものがたり』(里文出版、2016年)の英訳書(The Soul of Gold: Tales from a Japanese Metal Artist’s Studio by Osumi Yukie, translated by Joel Earle)がお薦めです!

本書は根付愛好家にとって最も興味のある「彫金」の本ではないのですが、前回述べた通り、広く日本の金工について海外の金属工芸との対比で知るにはもってこいの本です。そしてこの英訳書の大きなおすすめポイントは、翻訳したのがジョエル(通称ジョー)・アール氏であることです。

日本の美術工芸について翻訳するには、翻訳の優れた技能だけでなく、内容の専門的な知識も必要となります。特殊な言葉が多い上に、技法はある程度以上の知識がないと、日本人が日本語で読んでいても十分理解するのは難しいからです。ましてや英語にするのはなおさら難しいです(その難しさが骨身に染みて分かっている私が言うのですから間違いありません!)。文意がきちんと把握できていない、あるいは訳出先の言語(この場合は英語)でのその分野の適切な言葉遣いを知らないと、頓珍漢な訳になってしまいます。

その点、アール氏はボストン美術館やヴィクトリア&アルバート博物館といった世界最高峰の博物館の日本部門長などを歴任され、海外における日本美術の研究者として著名な方です。しかも鋭い言語感覚をお持ちです。本書も慎重かつ丁寧に言葉を選んで翻訳された美しい英文になっていて、「うわ〜、すごい」と感嘆するばかりです。

また、翻訳は著者に確認できない場合など、著者の意図と微妙にずれて誤訳になることさえありますが、本書ではその心配がありません。著者の大角先生は英語がお上手で(私は先生の通訳をしたことがあるのですが、特に技法に関しては私抜きでお話しいただいたほどです!)、その先生がアール氏と英訳文について直接意見交換をして完成したそうなので、翻訳の精度が高いと言えます。

さらに、本書は各章冒頭の引用も含めて、すべてが翻訳されている点もお薦めです。翻訳は予算などの都合で要点だけを英訳する場合もあり、内容が薄まってしまうことを残念に思っていた私としては、嬉しい限りです。

本書(英語版)の前書きで大角先生が、海外に一部の技法がことさら大きく取り上げられて、その分野全体の正しい理解が必ずしも進んでいない状況を指摘されています。これは日本の工芸の他分野にも言えると思います。その状況が改善されるためにも、『うるしの話』と同様、日本の金工について優れた作り手による素晴らしい本が、良質の英文で世界の方々にお読みいただけるのは大変喜ばしいことです。

下記のリンクにてアマゾンほかネットショップで入手可能です。

アマゾン(日本)、Amazon.com(米国)、Aamzon.co.uk(英国)

駒田牧子

http://koryuen-jp.com/wp-content/uploads/2020/10/makiko-face.jpeg

海外のお知り合いにもぜひお薦めください!


香柳園はAmazon.co.jp, Amazon.com, Amazon.co.uk アソシエイト・プログラムなどのアフィリエイト・プログラムに参加しています。上記のリンクをクリックしてご購入いただくと、香柳園に少額の手数料が入ります。ありがたく香柳園の活動に役立てたいと思います。